「売れない」「高い」「経営統合」 日本のパソコン「三重苦」にあえぐ
スマホに押されパソコン市場が振るわない。2015年の出荷台数は大幅に落ち込んだ。円安で値段は高くなり、売れ行き不振に拍車をかけている。国内メーカーの経営統合の具体化も進み、「三重苦」の様相だ。
IT専門調査会社 IDC Japan 株式会社によると、2015年の出荷台数は、前年比で31.4%減。484万台少ない1055万台にとどまった。内訳は、家庭市場が前年比25.2%減の449万台、ビジネス市場が同比35.5%減の606万台。過去10年でも最低水準だ。昨夏、Windows10が公表され、それに伴いWindows10搭載のパソコンが発売されて新規需要が見込まれたが、数字を見る限り、その効果は全く表れていない。
理由の一つが、パソコンの高騰だ。3、4年前なら量販店で7~8万円で買えたと記憶している人が多いのではないか。ところがいま今や、量販店でも10万円以下の日本メーカーのパソコンはほとんど見当たらない。標準的な価格ラインが大幅に上がっている。
アベノミクスで、円は1ドル80円台から120円以上に。パソコンのパーツは海外から輸入しているものが多いので必然的に本体価格にハネはねかえる。消費税が8%になり、そのダメージもありそうだ。一部の国産メーカーは海外から日本国内へ生産拠点を移しているようだが、価格にはまだ反映されていない。
そうした中で、最近、取りざたされているのが国内メーカーの経営統合だ。富士通、東芝とソニーのパソコン事業を分社した「VAIO」(長野県安曇野市)の3社が、パソコン事業の統合に向け本格的な交渉を進めている。
パソコンの基本性能はCPU、メモリ、ストレージ容量だが、各社の製品の機能面は大差がない「汎用品化」が進む。そのため価格競争が激化し、利益が出にくくなっているのだ。このままでは「共倒れ」になりかねない。そこで日本のパソコンメーカーは生き残りをかけて結集し、「日の丸パソコン」で再生を目指そうとしている。
もちろんこれには工場の統廃合や人員の集約など、様々な「痛み」が伴う。仮に成功しても、世界市場に目を転じれば、日本勢の劣勢は明らかだ。首位のレノボのシェアが2割程度。2、3位にHP、デルの米国勢がつけ、4~6位にエイサー、エイスースの台湾勢と米アップルが入る。日の丸3社連合となっても、合わせてシェア5%程度にすぎない。前途は多難だ。
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