花粉症、注射1本でスッキリ? 試してみたいけど・・・
春は花粉症の季節だ。しつこい花粉症に悩んでいる人にとって、興味があるのが「花粉症注射」。注射1本で症状をなくしてしまうという。推奨している医師もいる。実際はどうなのだろう。長く通院する必要がなく、費用も比較的低いとうたわれ、手軽な治療法に思えるのだが――。
注射での花粉症治療には、「アレルゲン免疫療法(アレルゲン特異的免疫療法、減感作療法とも)」という、花粉の抽出液を、濃度の低いものから少しずつ高くして注射し、花粉を防御する免疫を獲得させる根治療法がある。しかし、定期的に2年以上、医療機関で注射を打ち続けなければならず、とても1回では終わらない。
では、1本ですむという注射とは何か。実は「ステロイド注射」だ。薬物療法でも利用されているように、ステロイドは非常に強い免疫抑制作用があり、免疫反応の一種であるアレルギー、花粉症も抑えることができる。ただし、その高い作用と引き換えに、副腎皮質機能低下や皮膚障害、月経異常など多岐に渡る副作用もある。免疫が抑制されるため、感染症への抵抗力も落ちる。
点鼻薬や点眼薬、内服薬にもステロイドが使われているのに、なぜ注射がとくに問題になるのだろうか。
点鼻薬や点眼薬は少量を体の一部に使用するだけ。重症者に処方される内服薬も、ステロイド以外の薬でどうしても効果が確認できない場合にのみ、服用期間を短く限定して使用される、いわば最終手段。こうした薬剤は仮に副作用が出ても、使用をやめることができる。
しかし、注射の場合、一度注入してしまうとあとから抜き取るということはできない。特に筋肉に注射する筋肉注射は、注射された部位に薬剤がとどまり、徐々に体内に広がっていくため、効果は長続きするかもしれないが、副作用が起きた場合に対処できないのだ。
1回の注射程度であれば問題ないとの声もあるが、厚生労働省科学研究班が「リウマチ・アレルギー情報センター」で公開している2000~2005年の調査では、ステロイド注射をした花粉症患者70人のうち、結局1回では効果がなかったとして1シーズンに3回以上注射をした人は約40%にのぼる。さらに、ステロイド注射の副作用について、治療を受けた医療機関で適切に説明されていない人も、約60%いたという。
もちろん1回でうまくいった人もいるわけだが、自分が受ける治療法については副作用もきちんと把握したうえで受けるのが望ましい。
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