ダ・ヴィンチ、ボッティチェリ、カラヴァッジョ・・・ イタリアの大型展が目白押し、なぜなの?
2016年は日本でイタリア関係の超大型展覧会が目白押しだ。年明け早々の1月16日からは「ボッティチェリ展」(東京都美術館)と「レオナルド・ダ・ヴィンチ展」(江戸東京博物展)。さらに3月1日からはバロック美術の鬼才「カラヴァッジョ展」(国立西洋美術館)も。
どうしてこんなにイタリア関係のビッグな展覧会が多いのだろうか。
国交樹立150周年
答えは単純だ。今年が日本とイタリアの国交樹立150周年にあたるから。
日本とイタリアは1866年、修好通商条約を締結し、国交を樹立した。当時のイタリアは養蚕が主産業だったが、国内に伝染病が蔓延して大打撃を受け、遠く離れた日本から蚕卵を調達することになった。日本は大いに稼ぎ、一時は輸出の2割がイタリアだったという。明治維新後の日本の発展にイタリアが多大な貢献をしてくれたということになる。それ以降も緊密な関係が続き、今年が「150年」の節目ということで様々なイベントが計画されている。
イタリアと言えばルネッサンス絵画の本場だ。美術界の事情通によると、美術品の名品を海外から借用するのは大変な困難が伴う。2007年にダ・ヴィンチの名作「受胎告知」を東京国立博物館で公開したときは、直前になってイタリアの国会で国外持ち出しに反対する動きが強まり、関係者がやきもきした。
ところが、今回のような「記念年」だと、借りる名目が立つので交渉がラクになる。普通なら「門外不出」とされるような名品も「特例」として借用のプッシュができる。借用謝礼も「大幅ディスカウント」されることが少なくない。したがって主催者はこうした特別の機会を念頭に、早くから大型イベントを準備することが多いのだという。鑑賞する側から言えば、今回のような機会を見逃さずに展覧会に足を運ぶのが賢い、ということになる。
光と闇に彩られた数奇な人生
さて、今年の超大型展――ダ・ヴィンチ(1452~1519)やボッティチェリ(1445?~1510)は誰もが知るルネッサンスの天才だが、カラヴァッジョ(1571~1610)については「初耳」「WHO?」という人もいるかもしれない。
ミラノ生まれのイタリア人画家。初期バロック絵画を代表する鬼才だ。人物の姿をドラマティックに描く手法や、光と陰の明暗を明確に分けるインパクトの強い表現法は、やや遅れて登場するルーベンス、レンブラント、フェルメール、ベラスケスなどにも大きな影響を与えたと聞けば、その凄さが分かる。
20代で名声を確立したが、激しい気性から刃傷沙汰を繰り返し、ついに殺人事件まで引き起こす。死刑宣告を受けたが、逃亡、恩赦を求めてローマへ向かう途中で客死した。まだ38歳の若さだった。
一時は忘れられていたが、20世紀後半になって再評価された。その作品同様、鮮やかな光と闇に彩られ、生き急いだかのようなドラマティックな生涯は、映画にもなった。それだけに美術ファンの関心は高く、前回、2001年に日本で初めて開かれた「カラヴァッジョ 光と影の巨匠-バロック絵画の先駆者たち展」(東京都庭園美術館)は、会場が小さいにも関わらず18万5597人が詰めかけた。
最近、日本ではフェルメールの人気だが、熱心な美術ファンの間ではカルヴァッジョへの注目度も劣らず高い。日本とイタリアの長い交流の歴史に思いをはせつつ、会場に足を運んでみてはどうだろう。
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