人生、「百歳まで読書」なのか 「10歳までの読書量」で決まるのか
私たちは、いったい何歳まで勉強が可能なのだろうか。あるいは勉強は、何歳から始めるといいのだろうか。そんな疑問に答える本がこのところ何冊か話題になっている。知識欲旺盛なGoGetterzにとっても興味深い。
蔵書を捨てることから始める
2015年7月に出た『百歳までの読書術』(本の雑誌社)は、生涯勉強を続けたい人にとっては気になるタイトルの本だ。著者の津野海太郎さんは現在77歳。長く晶文社の編集者や「季刊・本とコンピュータ」の編集長を務めた。出版界では有名な人だ。
副題に「七十歳からの本とのつき合い方をつづる」とある。「百歳まで」はちょっと、と思っても、「七十歳から」と言われれば、心が動く人も少なくないかも。超高齢化社会。2,3、年後には「団塊世代」がこの年代に突入する。
著者の薦める「老年読書術」は単純だ。まず本を捨てよ、という。手元に本がありすぎては、残りの限りある人生では読み切れない。蔵書を「すぐ捨てる本」「つぎに捨てる本」「つぎのつぎに捨てる本」「死ぬまで捨てない本」に分けて減らしていく。新しい本はできるだけ買わないで図書館を利用する。
なるほど。そうしたいとは思うが、どの本にも愛着があるという人が多いのではないだろうか。津野さんも2500冊ほどまで圧縮したが、そこで壁にぶつかっているそうだ。
図書館で本を借りようにも、例えば又吉直樹さんの『火花』には100人、200人待ちがザラだ。順番を待っているうちに死んじゃうかもしれない。と思って買うと、また本が増えてしまう。悩ましい。
大ロングセラーの著者に学ぶ
もう少し早く、『50代から始める知的生産術』(大和書房)というのはどうだろう。著者は大ロングセラー『思考の整理学』で知られる英文学者、外山滋比古・お茶の水大名誉教授だ。こちらの副題は――「人生二毛作」の生き方――。「日本一『バイタリティのある91歳』による、頭を活性化し、毎日を楽しむ方法!」というキャッチがついている。
1986年に文庫本が出た『思考の整理学』は2000年代に入って人気に火がつき、累計売り上げは約200万部。2014年の大学生協文庫本売り上げで、東大、早大ともに1位。近年は入試問題でもしばしば取り上げられ、受験生の必読本だ。
著者自身が、60歳のころに書いた『思考の整理学』が大ヒットになった実績があるだけに、『50代から始める知的生産術』に心が動く中年、熟年は少なくないはず。今年2月に出た本だが、すでに10万部を突破したそうだ。
老いてなお読書して自分を磨く、あるいは50代からの人生再出を説く本がある一方で、そうした努力は「遅すぎる」とみる本もある。
14年末に出た『将来の学力は10歳までの「読書量」で決まる!』(すばる舎)。幼少期の「読書習慣」こそが「子ども」の地頭力の土台になると主張する。7.5万部と着実な売り上げを見せている。
著者の松永暢史さんは教育環境設定コンサルタント。多くの子どもに接してきた体験から、「学力」と、「10歳までの読書量」の相関に気づく。わが子を「本好き」にする「読み聞かせ」のコツ、読書習慣が身につく環境づくりなど、子供の学力がどんどん伸びるメソッドを同書で解説する。
10歳までの読書量が大事なのか、50代からも知的生産術が可能なのか、いや100歳までの読書術で人生はさらに豊かになるのか。よく考えると、それぞれは矛盾するものではない。「10歳までにたくさんの本を読み」「50歳になってもなお向上心を持ち」「100歳までたゆまず本を読む」ことは、可能なのだ。
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