死ぬ前に「お迎え」が来る これは「迷信」ではないらしい
2025年には団塊世代が70代後半になる。日本人の年間死者は、現在の約120万人から約160万人以上に急増する。そんな多死社会を前に気になる話がある。「お迎え現象」だ。死の間際にすでに亡くなった人らが枕元に立つ――幻覚と思われがちだが、実はそうでもないらしい。
「お迎え現象」については、医師と社会学者らによる学術的な研究調査がある。宮城県で在宅ケアの医療法人「爽秋会」を主宰していた医師の岡部健さん(2012年死去)は、死期が近づくと「お迎えが来た」という患者があまりに多いことに驚いた。
「お迎え現象」は、これまで医学的には「せん妄」と診断され、脳への酸素不足や全身の衰弱から来る幻覚や妄想と片づけられてきた。岡部さんは「この現象を科学的に解明したり否定したりするのではなく、安らかに旅立つ死へのプロセスと考え、まず実態を調べるべきだ」と考えた。
そこで2007年、仲間の医師や母校の東北大学の社会学者らと一緒に、これまで看取った700人近くの患者の遺族にアンケート。看取りの際の経験の中で、「患者が、他人には見えない人の存在や風景について語ったり、感じていたりした様子はなかったか」と尋ねた。366人の遺族から回答が寄せられ、そのうちの42.3%が「亡くなる前に『お迎え現象』があった」と答えた。
「お迎え現象」が起こるのは自宅が圧倒的に多く87.1%。病院は5.2%しかない。亡くなる数日前が一番多く43.9%で、「お迎え」が来てから1~2週間以内に旅立つ人がほとんどだ。
「お迎え」に来た相手は、「亡くなっている家族や友人」が52.9%と多く、飼っていたイヌやネコが現れるケースもあった。「お迎え」が来た人の約9割が穏やかに旅立ったようだったという。
しばしば「最期は自宅で」といわれる。だが、実際には病院で亡くなる人が増えている。どうすればいいのか。お彼岸の時期だが、親の最期を看取る立場の人は、日ごろからよく考えておきたい。
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