「トッド」さん、日本でも大人気 京大受験生も「入試対策」で読んでいる
『トットちゃん』と言えば黒柳徹子さんのベストセラー。では、「トッドさん」は? フランスの有名な人口・歴史学者エマニュエル・トッド氏だ。人口統計や家族構造に基づく斬新で大胆な世界分析で知られ、このところ、日本でも大人気だ。
週刊朝日は、今年の京都大学「特色入試」合格者のこんな声を紹介している。「論文試験の前に新書を数冊買って読みました。『グローバリズムが世界を滅ぼす』の著者の1人、エマニュエル・トッドが最近話題なので、出るかも、と思いました。実際にこの本に書かれていることを論文入試で丸々使いました。読んでいてよかった」
昨年5月に出版された『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告 』(文春新書) はすでに13万部を突破。今年1月に出た『シャルリとは誰か? 人種差別と没落する西欧 』(文春新書)も順調だ。1月28日、慶応大学での「エマニュエル・トッド来日記念講演」には予定募集定員180人を大幅に超える応募があり、早々に募集を締め切った。NHKは昨年9月に「世界経済の行方 歴史学者エマニュエル・トッドに聞く」、今年2月にも「エマニュエル・トッドに聞く テロと社会」で登場させるなど、まさに引っ張りだこだ。
トッド氏は1951年パリ近郊の生まれ。ケンブリッジ大などで学び76 年、最初の著作『最後の転落』で近い将来のソ連崩壊を予測し頭角を現す。以後、94年には『移民の運命』で西欧の移民問題を、2002年の『帝国以後』でアメリカの凋落を、07年の『文明の接近』(共著)で変貌するイスラム圏を取り上げ、旧ソ連、アメリカ、移民、イスラム、西欧の没落などについての「大著」を次々と出版。世界が直面する課題を早々と予見し、その解明に取り組んできた。
母方の祖父は高名な作家で哲学者のポール・ニザン(1905~ 1940年)。ジャン・ポール・サルトルの学友で、「ぼくは二十歳だった。それがひとの一生でいちばん美しい年齢だなどとだれにも言わせまい」──この冒頭の名文句によって全世界の若者から共感をえた青春小説の傑作『アデンアラビア』を残したことで知られる。
トッド氏は、エリートが多い西欧のインテリの中でも毛並みの良さでは群を抜く。世界が不安定な時代に突入しているだけに、その由緒正しい知性の発言に魅せられるのかも。
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