「鉄緑会」と「サピックス」  通わないとエリートになれない?

 お受験関係者にとって気になる本が出た。「『ルポ塾歴社会 日本のエリート教育を牛耳る「鉄緑会」と「サピックス」の正体』 (幻冬舎新書、おおたとしまさ著)。2016年1月29日に発売されたばかりだが、2月25日現在、アマゾンの「学生の勉強法」部門では1位にランクインしている。
 本書によれば、開成、筑波大付属駒場、灘、麻布など進学校の中学受験塾として圧倒的なシェアを誇るのが「サピックス小学部」。そして、その名門校の合格者だけが入塾を許される秘密結社のような塾が「鉄緑会」。医学部に進む東大理Ⅲの合格者の6割以上が鉄緑会出身。この二つの塾が日本の「頭脳」を育てていると言っても過言ではないという。
 著者は育児・教育ジャーナリスト。麻布中学・高校出身で上智大学英語学科卒業。リクルートで雑誌編集に携わり、私立小学校での教員経験もある。関係者から取材を重ね、サピックス一人勝ちの理由と、鉄緑会の秘密を徹底的に解剖する。
 さっそく、『「就活」と日本社会―平等幻想を超えて』 (NHKブックス)などの著書がある評論家の常見陽平氏が「『塾歴社会』を直視しなければ、日本の教育問題は理解できない」と、長文の論考をネットに載せた。
 本当に有名進学塾に行かないと落ちこぼれるのか。一般に学力は、本人の「地頭」「意欲」「努力」の3点セットで決まると言われる。有名塾の生徒は、この3つがそろい、さらに「適切な指導」があるので、成績がよくなるのは当然かもしれない。
 アマゾンのカスタマーレビューを見ると「考えさせられた」という声が多い。しかし中には実際に子供をサピックスに通わせた親からクールな意見もあった。
 「サピックスは極めて生徒を選ぶ塾」
 「何も鉄緑会に通わなくても国公立大学の医学部に現役で合格することは出来る」
 たしかに「子供を難関塾に入れたが、成績が下位なのでやる気をなくした。別の塾にしたら、上位になって有名校に合格した」「現役の時は大したことがなかったが、浪人したら大幅に成績が伸びた」などという話はよく聞く。運よく高級官僚になっても局長まで到達するのは容易ではないし、民間企業は実力主義が基本だ。司法試験合格者の約9割は非東大、医師国家試験は約99%が非東大。医者や弁護士になる道はいろいろある。
 社会に出たら「学力」よりも「人間力」とも言われる。本書のタイトルが刺激的だが、親としては浮き足立たずに子供の様々な可能性を伸ばす育て方を心がけるのがよいのかもしれない。

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