アジアNO.1のシンガポール大、さらに先へ進む 日本と違って人文系も重視、「リベラルアーツ大」の新キャンパス完成
日本ではこのところ文科省が人文社会科学系学部の縮小の動きを強めている。一方、アジアトップのシンガポール大がめざすのは、理系・文系の垣根を超えた「リベラル・アーツ」教育だ。
シンガポールのYale-NUSカレッジをご存知だろうか。アジアのトップ大学といわれるシンガポール国立大学(NUS、National University of Singapore)と、米アイビーリーグの最高峰イエール(Yale)大学が2011年、共同で設立したシンガポール初のリベラルアーツ・カレッジだ。
2015年10月11日と12日の2日間、新キャンパスの落成式典を兼ねたシンポジウムが開かれた。
在学生の4割が外国人
Yale-NUSカレッジは少人数の全寮制。従来のシンガポールの高等教育と米国式のリベラルアーツ教育とを融合させ、西洋と東洋、双方の良さを取り入れたカリキュラムを特徴としている。在学生の4割が外国人で、多様性においても際立っている。定員は1学年250人だが、2013年の開校以来、3年間で世界各国から3万人の入学希望者が殺到。合格率は5%を切り、入学を認められたのはさらにその半数という超難関だ。
キャンパスはこれまでNUSの一角に間借りしていたが、新たなキャンパスは6万4千平方メートルの敷地に3つの寄宿舎付き学習棟に加え、セミナールームや図書館、研究室、シアター、ホール、アートスタジオ、屋上庭園など、さまざまな設備が整備された。
式典にはシンガポール首相のリー・シェンロン氏やイエール大学のピーター・サロベイ学長、コーセラのリック・レヴィンCEOをはじめ、世界各国の高等教育機関や教育関連企業の代表者らが集まり、新キャンパスの完成を祝った。シェンロン首相は「Yale-NUSはイエール大学のコピーであってはならない。激動する国際社会の中で活路を見出すには、アジアの文化に適したリベラルアーツ教育を提供することが必要だ」と述べ、居並ぶ在校生や大学職員を前に、政府による多大な協力を約束した。
どの調査でもアジアのトップ
シンガポール国立大学はこのところ、国際的な評価が急速に高まっている。世界大学評価機関の英国クアクアレリ・シモンズ(Quacquarelli Symonds、以下QS)が2015年9月15日に発表した「第12回QS世界大学ランキング2015/16」では世界12位。アジアのトップだった。英国の教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)が15年10月1日に発表した世界大学ランキングでは26位。こちらもアジアトップだった。
東京大はQSで39位、THEでは43位で、どちらの調査でもシンガポール大の後塵を拝している。
世界的に評価の高いシンガポール国立大学がイエール大学とタッグを組み、シンガポール初のリベラルアーツ教育にチャレンジするということで、Yale-NUSカレッジは設立当初から注目を集めてきた。「リベラルアーツ」は日本では「教養」と訳されることが多い。その名を冠した学部や大学としては東京大学教養学部、国際基督教大学教養学部、国際教養大学(秋田)などが知られている。また早稲田大、上智大などには国際教養学部がある。
米国ではリベラルアーツ・カレッジがたくさんあり、少人数教育が特徴で、ひとつの専攻を持つのではなく幅広い分野を横断的に学び、教養と論理的思考力とを身につけることが重視される。出身者の中にはヒラリー・クリントン氏ら著名人も多い。専門的な大学院に行くための基礎教育機関とみなされることもある。
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